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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

海外トレンドを徹底解剖~中国編~

アリババを抜いた拼多多が運営する越境EC「Temu」の正体 激安の理由は厳しい価格競争とエンタメ性

 2023年7月に日本でもサービス提供を開始した「Temu(ティームー)」。同サービスを運営する拼多多は、2020年12月、アリババグループを抜いてEC利用者数1位を獲得しています。熱狂的な支持を集める理由は、どこにあるのでしょうか。一般社団法人深セン市越境EC協会日本支部代表理事 成嶋祐介氏が、中国EC市場を解説する本連載。今回は、Temuの正体と拼多多の強気な戦略を取り上げます。

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Temuは「SHEIN」の雑貨版?

 2022年9月にアメリカで立ち上げられ、ショッピングアプリダウンロード数1位を記録した越境ECサービス「Temu」。中国からの直送による、低価格での販売が特徴です。主要ECモールと比較して配送に時間はかかるものの、驚くほどの低価格を実現しています。そんなTemuが、日本にも2023年7月に上陸しました。

 同サービスの強みは、積極的なマーケティング戦略です。たとえば、アメリカ最大のスポーツイベントといわれる「スーパーボウル」に高額な広告を出稿。一気に知名度を上げ、2023年3月時点で累計5,000万ダウンロードを獲得しています。「億万長者のように買い物しよう」をキャッチコピーとし、節約志向が高まっているアメリカ市場で激安価格を武器に攻勢を強めています。

 しかも、中国から海外へ発送する場合でも、基本的に全品送料無料。公式サイトには、「90%オフ」「半額」といった文字が並び、クーポンのポップアップやプッシュ通知を大量に配信する「超プッシュ型」プロモーションが目を引きます。商品の品質にはまだまだばらつきがあるものの、90日返品無料など越境ECには珍しい施策のオンパレードです。

 2022年、激安アパレル越境ECの「SHEIN(シーイン)」が大きな注目を集めたのも、記憶に新しいのではないでしょうか。Bloombergは、SHEINの評価額がH&MとZARAの時価総額を合計した820億ドルを超える、1,000億ドルに達すると報道しています。Temuはまさに、急成長を続けるSHEINの雑貨版ともいえるのです。

 Temuは、中国EC3強の一つといわれる拼多多(ピンドゥオドゥオ)グループが運営しています。併多多が提供するサービスは、一言でいえば「共同購入」による革命的なビジネスモデルです。

 同グループは2020年12月、なんとアリババグループを抜いてEC利用者数トップの座に立ちました。2015年の立ち上げ以降、わずか5年でこの快挙を成し遂げたのです。ここで、併多多の特徴を三つ説明します。

(1)共同購入モデルの導入

併多多の核となるのは、共同購入機能です。一定の購入者が集まることで、割引価格で商品を購入できます。これにより、エンタメ要素がEC市場に加わりました。

(2)在庫問題の解決

中国のECプラットフォームでは、超大型イベント時に大量の在庫が生じる点に課題がありました。併多多は売れ残った在庫の処理に注目し、共同購入を通じて効果的な解決策を提供しています。

(3)中高年層の取り込み

地方都市の中高年層は、デジタルデバイスへの習熟度が低く、大手ECモールのリーチ外でした。併多多は、この層へ共同購入による低価格化のメリットを提示し、大きな市場を開拓しました。

 Temuは「TEAM UP、PRICE DOWN(みんなで買えば安い)」を意味し、併多多のグルーバル版サービスです。

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この記事の著者

株式会社成島代表取締役 成嶋祐介(ナルシマ ユウスケ)

 元一般社団法人深圳市越境EC協会日本支部代表理事。世界の最先端企業1800社とのネットワークを持つ中国テックビジネスのスペシャリスト。中央大学、茨城大学講師などを歴任。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社成島代表取締役。2019年から深圳市政府公認の深圳市越境EC協会日本支部の代表理事を務めた...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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