インタビュー 実践企業に聞くサーキュラーエコノミー

CSR部門任せにせず、資本主義の課題をビジネスで解決する──ビジョン経営のためのデザインとは?

ゲスト:株式会社コンセント代表取締役社長/武蔵野美術大学大学院造形構想学科 教授 長谷川 敦士氏【後編】

 今回のゲストは、株式会社コンセント代表取締役社長で武蔵野美術大学大学院造形構想学科教授でもある長谷川 敦士氏。前編では、循環型社会を前提としてビジネスとサービスデザインの関係、サービスデザイン自体の進化、新しい価値を探るために有用なトリプルダイヤモンドプロセス、西洋型の人間中心デザインと受け身から主体モードへと生活者を変えるための方法などを聞いた。後編では、企業と働く個人の行動変容の起こし方と、コロナ禍でのビジネスの変化に関する内容をお届けする。

[公開日]

[語り手] 長谷川 敦士 [聞] 大山 貴子 [取材・構成] フェリックス清香 [画] 青松 基 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] サービスデザイン サービス・ドミナント・ロジック サーキュラーエコノミー CSR ビジョン経営

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なぜNetflixは休眠会員に退会を“推奨”したのか

大山 貴子氏(株式会社fog代表、以下敬称略):前編ではサービスデザインとサーキュラーエコノミーについて議論をしてきましたが、実際にアクションを起こすとなると環境を重視した取り組みはなかなか進まないですよね。特に大企業は部門ごとに仕事が分かれている状況で、環境についてはCSR部門が担当すればいいと捉えられることが多いなと感じます。

長谷川 敦士氏(株式会社コンセント 代表取締役社長、以下敬称略):そうですね。SDGsとかCSRを、余力があればやるというムードは払拭していきたいですね。こういった意識になってしまうのは自分ごととして捉えられないからでしょうね。

大山:様々な企業の方を集めてサーキュラーエコノミーのワークショップをやったことがあるのですが、誰が変われば会社が変わるか、という質問をしたところ「代表」「管理職」「消費者」などと様々な人が出てきたのに、一人として「私が変われば変わる」という人がいなかったんです。

長谷川:当事者意識を持ってもらうためには、まず「環境を守る」などの大きなゴール設定に安易に逃げないで、自分の肌感覚として「自分のやっているビジネスは正しいのだろうか」と批判的、批評的な視点を持つことが重要ではないかと思います。

 例えば、先日ネットフリックスが1年以上休眠状態でいる会員に「退会しますか?」と連絡をしたことがUX業界で話題になりました。サブスクは休眠会員にお金を払ってもらってビジネスが継続することが当たり前の状態で、企業によっては退会しにくくするためにUIをデザインする方法を考えてしまうほど感覚が麻痺している状態だったから、話題になったんですよね。

 僕は人間中心設計推進機構(以下、HCD-Net)というNPOで副理事長をやっています。その中で倫理規定委員会を立ち上げて秋ごろにリリースしようとしています。

 倫理規定委員会では3つの職業倫理を定義しています。その中の1つは「自分たちの作る物や自分たちが関係する製品、自社の製品が、きちんとヒューマンセンタードになっているかについて責任を持ちましょう」という考え方です。たとえば自動車メーカーのデザイナーであれば車のデザインに責任を持つだけでなく、車が人間社会に対して適切であるかに責任を持つことまでを求めたいのです。

大山:なかなか難しいですよね。企業の一社員としてそこまで考えられる人は、現状だと少なそうです。

長谷川:「自分がそれを考えてもしょうがない」と思考停止してしまっているのですよね。それを打破するには、発言したら聞いてもらえる場を作る必要があり、業界団体が受け皿になる仕組みを作れば良いのではないかと思います。

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