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なぜ新しい価値を生み出すには「アート・シンキング」が必要なのか──“深層的な思考”が0→1に効く理由

ゲスト:アート・アンド・ロジック株式会社 取締役社長 増村 岳史氏 【後編】

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 今回のゲストは、著書『ビジネスの限界はアートで超えろ!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が話題となった増村岳史氏。今後のビジネスにおいて相互の関連が強まっていくであろうアート、デザイン、サイエンス、テクノロジーの関係が語られた前編に続き、後編では、新たな価値を生み出す「遅い思考」の重要性や、ビジネスパーソンがアート思考を身につける意義とその方法についてBiz/Zine編集長が聞いた。

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時間をかけて蓄積した「経験」や「学習」をベースにした“深い思考”が、新しい価値を生み出す理由

──書籍『ビジネスの限界はアートで超えろ!』には、サイエンスやアートには「深層的な思考」が必要だと書かれています。そもそも「深層的な思考」とは何か、またイノベーションに必要だという理由は何でしょうか。

増村岳史氏(アート・アンド・ロジック株式会社 取締役社長、以下敬称略):「深層的な思考」または「遅い思考」とは、長期的な目標達成やビジョンを実現するためのものです。一方で「表層的な思考」・「早い思考」は短期的な課題や目標を完遂するためのものです。

タイトル

 KPIを設定し、短期の目標を達成すべくPDCAをクルクル回していく。これは早い思考でやっていることです。お金を稼ぐには必要なことですが、これだけで生きていけるかというと、そうではないですよね。

 例えば、2025年問題と言われる後期高齢化社会の本格化にどう対応するか。世界的にはガソリン車から電気自動車にシフトすると言われている2030年までに、自動車メーカーはどうしたらいいのか。こういうことを考えるには、深層的な思考、つまり遅い思考が必要で、そのためには様々な経験や学習の蓄積が必要です。ゼロからイチを生み出すというのは、海抜ゼロメートルの下にいろいろな経験や思考があって初めてできることなんです。

タイトル

 茶の湯の世界に「守破離」というものがありますよね。最初はお師匠さんの言うことを完璧に守り、その次にそれを少しずつ破って自分のオリジナリティを取り入れていく、そして習ったことから離れて新しい自分の世界を作る、というものです。

 これはビジネスでも同じで、例えばソニーさんは業務用のオーディオメーカーから始まって、ラジカセやウォークマンのような民生用にも展開し、コンテンツも必要だからとCBSと合弁でレコード会社を作った。これは守破離の“破”ですよね。“離”は何かというと、例えばAIBOです。イヌ型のエンターテイメントロボットというのは元々の事業からはすごく遠く離れていて、だから事業化まで時間がかかります。でも誰もやらないようなことをやったから、高次元のイノベーションなわけです。

 他にも、王子製紙さんが王子サーモンという鮭の養殖事業を始めた例や、スティーブ・ジョブズが大学でカリグラフィーの授業を聴講していたことが、10年後、最初のMacに沢山の書体や文字と文字の間の幅を調整する機能を入れるというアイデアにつながった例などが有名です。これは深層的な思考・遅い思考の結果です。海抜ゼロの下にあった経験や記憶が、時間をかけて新しい価値を生み出したのです。

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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